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フロンティアモデルと AGI:最先端の強い AI と、人のように幅広くこなす AI

出典を確かめた日 2026年10月1日(木) / 約8分で読めます

一言で

フロンティアモデルは、いちばん先を行く、とても能力の高い AI のモデルを指す言葉です。AGI(汎用人工知能)は、多くの作業を少なくとも人と同じくらいこなせる AI を指す言葉です。どちらも、出典によって線の引き方が違います。

このページで分かること

先に知っておく言葉

フロンティアモデル:出典ごとの定義

論文は「危険な能力を持ちうるか」を定義の中心に置き、Frontier Model Forum の会員向けの定義は「すでに広く使われているモデルを上回るか」で線を引いています。

日本の指針では「高度な AI システム」

総務省・経済産業省の AI事業者ガイドライン(第1.2版、2026年3月31日)は、「高度な AI システム」を、最先端の基盤モデルと生成AI システムを含む、いちばん高度な AI システムとしています(広島 AI プロセスの定義を引いたもの)。こうしたシステムを作る事業者には、G7 の広島 AI プロセスの国際行動規範(2023年10月)を参照するのが望ましいとしています。その規範では、市場に出す前も含めて、レッドチーミングなどの評価でリスクを探して手当てすることを求め、気をつけるリスクとして、化学・生物・放射性物質・核の兵器にかかわるリスク、攻撃に使えるサイバーの能力、物理的な仕組みの制御や重要なインフラへの干渉を含む健康・安全へのリスク、モデルが自分の写しを作ること、有害な偏見や差別などを挙げています。

上の論文も、最低限の安全の基準として、公開前のリスク評価、外部の専門家による検証、評価の結果にもとづく公開の判断、公開後の見守りを挙げています。論文は、こうしたモデルの規制が難しい理由として、危険な能力は思いがけず現れうること、公開したモデルの悪用を確実に防ぐのが難しいこと、能力が広く出回るのを止めにくいことを挙げています。

AGI:いくつもの定義

Google DeepMind の研究者の論文「Levels of AGI」(2023年11月に公開、ICML 2024 で発表)は、AGI を、多くの作業で少なくとも人と同じくらいできる AI システムを表す言葉で、大事だが議論を呼ぶこともある考え方、と説明しています。この論文は9つの定義を比べており、たとえば次のものを紹介しています。

論文自身は、考え方や意識のような「中の仕組み」ではなく「できること」で定義するべきだとし、性能の深さと、こなせる作業の幅の2つで段階を分ける案を出しています。自動運転の「自動化のレベル」が政策や進み具合の議論をはっきりさせたように、AGI にも段階を決めると役に立つ、という考えです(論文が引き合いに出している例)。段階は、多くの作業でその水準に届いているかで決め、一部の作業ではもっと上でもかまわない、としています。

論文は、書いた時点(2023年9月)の最先端の言語モデル(ChatGPT・Bard・Llama 2 など)を、短い作文や簡単なプログラムでは Competent だが、数学や事実にかかわる作業など多くの作業ではまだ Emerging で、全体ではレベル1にあたると見ています。また、労働の置き換えという OpenAI の憲章の基準は、レベル4(Exceptional)によく合う、としています。

ニュースでの出方

関連する言葉

出典

  1. Markus Anderljung ほか「Frontier AI Regulation: Managing Emerging Risks to Public Safety」arXiv:2307.03718、2023年7月6日(第4版 2023年11月7日) arxiv.org ↗
  2. Frontier Model Forum「About」 frontiermodelforum.org ↗
  3. Frontier Model Forum「Membership」 frontiermodelforum.org ↗
  4. 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」2026年3月31日 soumu.go.jp ↗
  5. Meredith Ringel Morris ほか(Google DeepMind)「Position: Levels of AGI for Operationalizing Progress on the Path to AGI」arXiv:2311.02462、2023年11月4日(ICML 2024、第5版 2025年9月24日) arxiv.org ↗

確認メモ:2026年10月1日に、上の出典を開いて確かめました。論文「Frontier AI Regulation」は arXiv の PDF から文字を取り出し、要旨・要約と2.1節(定義と危険な能力の例)を読みました。Frontier Model Forum は、団体の紹介のページで定義を、会員のページで会員の会社を確かめました。AI事業者ガイドラインは第1.2版の用語の定義(「高度な AI システム」)と、第3部の広島 AI プロセスの国際行動規範の部分を読みました。このガイドラインの本文には「フロンティア」「AGI」という言葉は出てきませんでした。論文「Levels of AGI」も PDF から文字を取り出し、1〜4節と表1(段階の表)を読みました。出典ごとの違いは、フロンティアモデルの定義の軸(危険な能力か、ほかのモデルとの性能の比べ方か)です。AGI の定義は、各社の公式の文章では確かめておらず、Google DeepMind の論文が紹介した形で載せています(OpenAI の公式サイトはこの欄では使わない決まりのため)。「Levels of AGI」の最新の版(第5版)は、レベル4の名前を Virtuoso から Exceptional に変えたと書いており、ここでは新しい名前を使っています。論文の「2023年9月の時点」の見立てはその時点のもので、いまのモデルがどの段階かは、確かめた出典に書かれていないため載せていません。危険な能力は種類だけを挙げ、中身は書いていません。「汎用人工知能」は AGI のふつうの訳語を添えたものです。AIログのニュースでは、Anthropic の研究チームの名前(Frontier Red Team)が出てくる記事もありますが、フロンティアモデルの話ではないため挙げていません。国の文書は公共データ利用規約にもとづき、内容を言い換えて使っています(出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」を加工して作成)。