一言で
ファインチューニング(fine-tuning)は、大量のデータでひととおり学習を終えたモデルに、特定の仕事や分野に合わせたデータを使って、もう一段の学習をさせることです。
このページで分かること
- ファインチューニングが何をすることか(出典ごとの説明)
- モデルの中の何が変わり、何が変わらないのか
- 公的機関の文書が、ファインチューニングについて何に気をつけるよう書いているか
先に知っておく言葉
- 事前学習:大量のデータでモデルを最初に学習させること(→ 別ページ「学習(事前学習)と推論」)
- パラメータ:モデルが学習の中で身につける数値(→ 別ページ「パラメータとモデルの大きさ」)
- 大規模言語モデル:大量の文章で学習した、文章を読み書きするモデル(→ 別ページ)
- プロンプト:モデルに入れる指示や文章(→ 別ページ「プロンプトとシステムプロンプト」)
出典ごとの説明
- Anthropic(Claude の会社)の用語集:事前学習を終えた言語モデルを、追加のデータでさらに訓練すること。モデルは、追加に使ったデータの特徴や傾向を表し、まねるようになる。特定の分野・仕事・文体に合わせたいときに役に立ちうる、としている
- Google の機械学習の用語集:事前学習を終えたモデルに対して、特定の使い道に向けてパラメータを調整する、仕事ごとの2回目の学習。例として、一部の大規模言語モデルでは、幅広い大量の文章で事前学習したあと、医療の質問に答える仕事に向けて学習させる、という流れを挙げている。使う例の数は、多くの場合その仕事に絞った数百〜数千、としている
- Google の機械学習の入門講座(Machine Learning Crash Course):土台になる大規模言語モデルを、アプリの目的に合う形にするための追加の学習。その仕事についての予測は、多くの場合ファインチューニングした後のほうが良くなる、としている。数百〜数千の例で済む場合もある、と書いている
モデルの中で何が変わるか
Google の用語集は、ファインチューニングのやり方として、次の組み合わせを挙げています。
- 事前学習で身につけたパラメータを、すべて変える(full fine-tuning と呼ばれることがある)
- 一部だけ変え、残りはそのままにする。変えるのは多くの場合、出力に近い側の層
- 層を新しく足す。足すのは多くの場合、出力に近い側の層の上
一部だけを変えるやり方について、用語集は「パラメータ効率のよいチューニング(parameter-efficient tuning)」の項を示しています。これは、すべてを変えるより効率よくファインチューニングする方法をまとめた呼び名です。Google の用語集によると、変えるパラメータは多くの場合すべてを変えるときよりずっと少なく、それでもできあがるモデルの性能は、たいていほぼ同じかそれに近いとされます。その一例の LoRA は、もとのパラメータを固定し、小さな学習用の部分を足して学習させる方法です。
Google の入門講座は、ふつうのファインチューニングは、学習の繰り返しのたびにすべてのパラメータを更新するため、例の数が少なくても計算の負担が大きくなりがちだ、と説明しています。また、ファインチューニングしてもパラメータの数は変わらない、としています(もとが100億のパラメータなら、ファインチューニング後も100億)。
プロンプトでの工夫との違い
Google の入門講座によると、プロンプトに例や指示を書いて出力を合わせる工夫(プロンプトエンジニアリング)は、モデルのパラメータを変えません。一方、ファインチューニングは、その仕事の例でモデルを学習させるものです。
Anthropic の用語集は、事前学習を終えただけのモデルは、質問に答えることや指示に従うことがもともと得意ではない、としています。そのため、ファインチューニングと RLHF(人の評価をもとにした学習 → 別ページ)でモデルを磨く、と説明しています。Claude もすでに、役に立つアシスタントになるようファインチューニングされている、と書いています。なお同じ用語集は、Claude の API では今のところファインチューニングを提供していない、としています。
何に気をつけるとされているか
- Anthropic の用語集:追加に使うデータと、それがモデルの性能や偏り(バイアス)に与える影響を、よく考える必要がある
- AI事業者ガイドライン(総務省・経済産業省):AI を開発する事業者だけでなく、AI を提供する事業者や使う事業者も、ファインチューニングや再学習をするときは、開発する事業者と同じように安全性を確保するよう努めることが大事だ、としている
- NIST AI 600-1(米国の国立標準技術研究所):ファインチューニングで安全やセキュリティの守りが損なわれていないかを確かめること、外部(第三者)のモデルの上にファインチューニングしたモデルは評価し直すことを、取り組みの例に挙げている。また、使うエネルギーや出る炭素の量は、事前学習・ファインチューニング・推論のどれをするかなどで変わる、としている
出典ごとの違い
- 使う例の数:Google の用語集は「多くの場合、数百〜数千」、入門講座は「数百〜数千で済む場合もある」と書いています。Anthropic の用語集には数が書かれていません
- RLHF との関係:Anthropic の用語集は、ファインチューニングと RLHF を並べて書いていて、2つの関係は説明していません。OpenAI の InstructGPT の論文(2022年)は、RLHF を使ってモデルをファインチューニングした、と書いています
関連する言葉
- 学習(事前学習)と推論・パラメータとモデルの大きさ・人の評価で調整する(RLHF・Constitutional AI)・小さいモデルと蒸留・プロンプトとシステムプロンプト(→ この欄の別ページ)
出典
- Anthropic「Glossary」の Fine-tuning・Pretraining の項 platform.claude.com ↗
- Google for Developers「Machine Learning Glossary」の fine-tuning・parameter-efficient tuning・Low-Rank Adaptability (LoRA) の項 developers.google.com ↗
- Google for Developers「Machine Learning Crash Course:LLMs: Fine-tuning, distillation, and prompt engineering」 developers.google.com ↗
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」本編 2026年3月31日、第2部「共通の指針」安全性の「適正学習」と脚注33 soumu.go.jp ↗
- NIST「NIST AI 600-1:Artificial Intelligence Risk Management Framework: Generative Artificial Intelligence Profile」2024年7月、2.5節と MP-4.1-007・MS-2.7-008 nvlpubs.nist.gov ↗
- Ouyang ほか「Training language models to follow instructions with human feedback」arXiv:2203.02155、2022年3月4日 arxiv.org ↗
確認メモ:2026年10月1日に、上の6つの出典の原文を開いて確かめました。Anthropic と Google の用語集は Fine-tuning・fine-tuning・parameter-efficient tuning・LoRA などの項を、Google の入門講座は Fine-tuning とプロンプトエンジニアリングの部分を読みました。AI事業者ガイドラインは脚注33、NIST の文書は環境への影響の節と、ファインチューニングに触れた取り組みの例を読み、InstructGPT の論文は要旨と導入で RLHF の扱いを確かめました。使う例の数と RLHF との関係は、出典ごとに書き方が違うため並べています。LoRA の仕組みの細かい説明(足す部分の作り方)は、一言で言える範囲を超えるため載せていません。AIログのニュースでは、この言葉はまだ出てきていないため、「ニュースでの出方」の節は置いていません。「層」は、モデルの中の計算の段を指すふつうの言い方を添えたものです。国の文書は公共データ利用規約にもとづき、内容を言い換えて使っています(出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」を加工して作成)。