一言で
AI のモデルを学習させたり動かしたりするには、大量の計算が要ります。その計算に使う処理の力・メモリ・記憶装置などを「計算資源」と呼び、GPU や TPU はその計算を速く進める専用の部品です。データセンターは、こうした機械を大量に置いて動かす施設です。
このページで分かること
- 計算資源・GPU・TPU が何を指すか(Google の用語集と日本の白書の説明)
- データセンターの数や、国内での偏り(日本の白書の数字)
- 電力や環境への影響について、公的機関の文書が何を書いているか
先に知っておく言葉
- 学習(事前学習)と推論:データを読ませてモデルを作っていくことと、できたモデルで答えを出すこと(→ 別ページ「学習(事前学習)と推論」)
- ファインチューニング:学習を終えたモデルを、特定の目的に向けて追加で学習させること(→ 別ページ「ファインチューニング」)
- CPU:ふつうのコンピューターで、いろいろな処理を受け持つ中心の部品
- 大規模言語モデル(LLM):大量の文章で学習した、文章を読み書きするモデル(→ 別ページ「大規模言語モデル(LLM)とは」)
- Transformer:大規模言語モデルなどで使われているモデルの作り(→ 別ページ「Transformer と注意(アテンション)」)
- スケーリング則:モデルやデータ、計算の量を大きくすると性能がどう伸びるかを表した関係(→ 別ページ「スケーリング則」)
計算資源とは
- Google の機械学習の用語集:「compute」の項で、モデルやシステムが使う計算のための資源のことだ、としています。例として、処理の力・メモリ・記憶装置を挙げ、次に述べる専用の部品(accelerator chip)の項を参照先にしています
- 総務省「情報通信白書」令和7年版(2025年7月):GPU を計算資源の例として挙げています。生成AI を作って使うためのインフラの需要が世界で大きく伸びており、日本にとって計算資源を確保することが大事な課題の1つだ、としています
GPU と TPU
Google の用語集は、深層学習の要になる計算のために作られた専用の部品をまとめて「accelerator chip(アクセラレータ)」と呼んでいます。一般向けの CPU に比べ、学習と推論をかなり速く、効率よく進められる、としています。用語集が挙げる例は次の2つです。
- GPU(NVIDIA):はじめは画像を描く処理のために作られた部品。たくさんの処理を同時に並べて進められる作りのため、処理の速さを大きく上げられる
- TPU(Google):機械学習の処理に向けて性能を高めた、特定の用途のための集積回路(ASIC)。TPU のチップを何枚も載せた基板には、速い通信の部品や冷やすための装置も付く。この基板を Google のデータセンターの中で専用の速い通信網でつないだ構成のうち、その TPU の版で用意される一番大きなものを「TPU Pod」と呼ぶ
用語集によると、こうした部品でモデルを学習させるときは、役目を分けます。全体の流れやデータの下ごしらえは、ふつう CPU で動く「ホスト」が受け持ち、実際の計算は GPU・TPU の上の「デバイス」が受け持ちます。1台に収まらないほど大きいモデルは、部分に分けて複数の装置に載せます(モデル並列)。用語集は、この方法は学習を遅くする、としています。
データセンター
情報通信白書 令和7年版は、次の数字を載せています。
- 2025年3月の時点で、データセンターの数は米国が5,426。日本は222で、米国の4%程度。2位以下の15か国を足しても3,975で、米国に集まっている
- 2023年の時点で、日本のデータセンターは、面積で見るとおよそ90%が関東と関西に集まっている。白書は、広い範囲の災害に備えるには、控えのデータを物理的に離して置くことが大事だとしており、総務省は地方に置く民間の事業者を基金で支えている
- 日本のデータセンターのサービスの市場は、売上高で見ると2023年が2兆7,361億円で、2028年には5兆812億円に届く見込み(図の出典は IDC Japan)
- 経済産業省の資料の見通しとして、AI のインフラの需要は2030年に、日本の国内・1年あたりで、サーバとストレージだけで約1兆円、2023年の約3倍になる、と注に書いている
また白書は、スケーリング則に従って、大手の IT 企業を中心に、GPU やデータセンターにお金をつぎ込む競争が激しくなった、と書いています。
電力と環境への影響
- 情報通信白書 令和7年版:生成AI や通信の伸びにともない、ネットワークやデータセンターの使う電力が増えることへの心配が高まっている、としています。科学技術振興機構(JST)の見通しでは、今の技術のまま省エネがまったく進まなければ、電力の量は大きく増えると予想されている、と紹介しています。総務省と経済産業省は2025年3月から「ワット・ビット連携官民懇談会」を開き、データセンターの整備を主に電力と通信の面から話し合っています
- NIST(米国の国立標準技術研究所)の生成AI の文書(AI 600-1、2024年7月):生成AI を学習させ、保ち、動かす(推論させる)ことは資源を多く使い、エネルギーと環境への負担が大きくなりうる、としています。その量は、事前学習・ファインチューニング・推論のどれをするか、扱う内容の種類、使う機械、仕事の種類で変わる、としています。今の見積もりとして、Transformer の LLM を1つ学習させると、サンフランシスコとニューヨークの往復の飛行300回分ほどの炭素を出しうる、とする見方を挙げています。あわせて、生成AI の環境への影響を見積もる方法で、合意されたものは今のところ無い、と書いています
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」第1.2版(2026年3月31日):共通の指針「人間中心」の項目の1つ「持続可能性の確保」で、AI の一生を通して地球の環境への影響も考えるよう求めています。特に生成AI のように計算の量が多いものでは、モデルを軽くする・目的に合わせてモデルを使い分ける、といった対策をとる、としています
関連する言葉
- 学習(事前学習)と推論・大規模言語モデル・スケーリング則・小さいモデルと蒸留・量子化・クラウドと処理する地域(→ この欄の別ページ)
出典
- Google for Developers「Machine Learning Glossary」の compute・accelerator chip・Tensor Processing Unit (TPU)・TPU chip・TPU device・TPU Pod・host・device・model parallelism の項 developers.google.com ↗
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」2025年7月、第Ⅰ部第1章第2節「激化する世界のAI開発競争」 soumu.go.jp ↗
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章第1節「主な課題の概要」 soumu.go.jp ↗
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章第1節「デジタル社会を支える強靱なデジタル基盤の確保」 soumu.go.jp ↗
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」第Ⅱ部第1章第8節「データセンター市場及びクラウドサービス市場の動向」 soumu.go.jp ↗
- NIST「NIST AI 600-1:Artificial Intelligence Risk Management Framework: Generative Artificial Intelligence Profile」2024年7月 doi.org ↗
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」2026年3月31日 soumu.go.jp ↗
確認メモ:2026年10月1日に、上の出典の原文を開いて確かめました。Google の用語集(2026年4月10日更新の版)は、compute・accelerator chip・TPU の各項・host・device・model parallelism の項を読みました。用語集には GPU だけの項は無く、GPU の説明は accelerator chip の項の例から取っています。情報通信白書 令和7年版は、上の4つのページの本文と注を読みました。データセンターの数・市場の数字・90%の数字は本文の文のとおりで、図は開いていません。AI のインフラ需要の数字は、白書が注で経済産業省の資料を引いているもので、その資料そのものは開いていません。NIST の文書は2.5節「Environmental Impacts」を読みました。AI事業者ガイドラインは第1.2版の本編の、共通の指針「持続可能性の確保」の項を読みました。「CPU」「データセンター(機械を大量に置いて動かす施設)」の言い換えは、確かめた出典に定めが無いため、ふつうの意味を一言で添えたものです。GPU の会社ごとの性能や値段、データセンターの電力の具体的な量は、確かめた出典に共通して書かれていなかったため載せていません。AIログのニュースでは、この言葉が出てくる記事の無料部分はまだ無いため、「ニュースでの出方」の節は置いていません。国の文書は公共データ利用規約にもとづき、内容を言い換えて使っています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」、総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」を加工して作成)。