一言で
公開モデル(オープンウェイトのモデル)は、モデルの中身である「重み」の数値を、誰でもダウンロードできる形などで一般に出したモデルです。非公開のモデルは、重みを手元に置いたまま、画面や API を通して使わせるモデルです。
このページで分かること
- 「重み」とは何か、それを公開する・しないで何が違うか
- 公開することの良い面と心配な面(米国の政府機関の報告書の整理)
- 日本の国の指針と、各社の公式ページでの扱われ方
先に知っておく言葉
- モデル:入力を受け取って、予測などの出力を返す仕組み
- パラメータ:モデルが学習で決める数値。重みはその一種(→ 別ページ「パラメータとモデルの大きさ」)
- API:プログラムから AI を呼び出して使うための窓口(→ 別ページ「API と料金の数え方」)
- ファインチューニング:学習済みのモデルを、目的に合わせて追加で学習させること(→ 別ページ「ファインチューニング」)
- 基盤モデル:幅広いデータで学習し、いろいろな用途に使えるモデル(→ 別ページ「基盤モデルとは」)
重みと、公開する・しないの違い
米国商務省の NTIA(国家電気通信情報庁)が2024年7月に出した報告書は、重みを、モデルの中の数値(パラメータ)のうち、入力に対してモデルが何を出すかを決めるのに関わるもの、と説明しています。学習で決まる数値で、事前学習を終えた時点のもの・途中の時点のもの・ファインチューニングしたもの、など種類がある、としています。この報告書が主に扱っているのは、米国の大統領令で定めた「デュアルユース(軍民両用)の基盤モデル」(規模が大きく、安全に重大なリスクのある仕事で高い力を示しうるもの)で、重みが広く手に入るものです。
同じ報告書は、出し方の違いをこう整理しています。
- 重みを手元に置く出し方:多くの開発元は、進んだモデルの重みを公開していないか、ごく限られた形でしか公開していない。使う人は、Web の画面や API に入力を送って出力を受け取れるが、重みそのものには触れられない
- 重みを広く出す出し方:インターネットなどからダウンロードできる形で、重みを一般に出す。報告書は、Meta・Google・Microsoft・Stability AI・Mistral などを、重みを出した開発元として挙げている。ただし、出しているのが各社のいちばん進んだモデルとはかぎらない、と添えている
報告書は、公開か非公開かの二択ではなく、段階があることも書いています。重みのほか、プログラム・学習に使ったデータ・説明の文書も、それぞれ別に、条件を付けて出せます。審査を通った研究者にだけ重みを渡す、時間をかけて少しずつ出す、使い方や再配布に条件を付けた使用許諾(ライセンス)で出す、といった形がある、としています。ただし使用許諾の条件は、守らせるのが難しいこともある、と添えています。
重みを出すと、何が起きるか
NTIA の報告書は、重みを広く出したときに起きることを、3つ挙げています。
- 作り手の想定の外で手を加えられる:新しいデータでの追加の学習などが、一から作るより、ふつうはずっと少ない知識・資源・計算でできる。良い目的にも悪い目的にも使え、悪意のある人が追加の学習で安全のための仕組みを外し、それを配ることもありうる、としている。非公開のモデルでも安全の仕組みを回り込まれることはあるが、モデルに組み込まれた安全の仕組みは、オープンウェイトのモデルのほうが全体としてずっと少ない、としている
- 作り手が手放す:一度ダウンロードされた重みは、配布元から消しても別の経路で出回りうる。作り手は、使う人の動きを見ることも、使わせるのをやめさせることもできない
- 自分の計算機で動かせる:手元の機械や借りたクラウドで動かせるので、作り手にデータを渡さずに使える。医療や金融のように秘密を守る必要のある分野で大事になりうる、としている。一方で、使われ方や悪用を見張ることは難しくなる
報告書の要旨は、良い面として、研究や開発に加われる人が増え、資金の少ない人も加われること、市場の主導権が少数の大きな開発元に集まりにくくなることも挙げています。心配な面としては、悪用や、見張りが行き届かないこと、責任の所在がはっきりしないことを通じて、国の安全・公平・安全性・プライバシー・市民の権利が損なわれうることを挙げています。そのうえで、報告書を出した時点では、報告書が扱うオープンウェイトのモデルを制限すべきだとも、将来も制限が要らないとも言い切れるだけの根拠は無い、と結論し、政府が危険を見張り続けることを勧めています。
国の指針と各社の扱い
- NIST の生成AI のリスクの文書(NIST AI 600-1、2024年7月):リスクがあるかどうかやその現れ方を左右する特徴の1つに、モデルへの触れ方の度合いや、重みが手に入るかどうかを挙げている。この文書では「open-source」と「proprietary(独自の)」という言葉で分け、組織の中の生成AI の利用の決まりを、両方を対象にするよう見直すことを勧めている
- AI事業者ガイドライン(第1.2版、2026年3月31日):共通の指針の「透明性」の中で、開発した AI システムをオープンソースにするときも社会への影響を考える、としている。高度な AI を作る開発者に参照を勧める広島 AI プロセスの国際行動規範の部分では、モデルの重みを守ることや、公開していない重みに触れられる人を限ることを挙げている
- OpenAI の開発者向けページ:gpt-oss-120b を「オープンウェイトのモデル」とし、Hugging Face からダウンロードでき、Apache 2.0 の使用許諾で、ファインチューニングできる、と書いている
- Google の Gemma の説明書:Gemma を、Gemini と同じ研究と技術から作った「オープンモデル」の一群と紹介している。自分の機械や携帯の機器、外のサービスの上で動かせ、目的に合わせて調整できる、としている
呼び方は出典によって「オープンウェイト」「オープンモデル」「オープンソース」と分かれています。NTIA の報告書は、重み・プログラム・データ・文書のどれを出すかで開き方に段階がある、と書いています。
ニュースでの出方
- 中国の Zhipu AI(Z.ai)の公開モデル「GLM-5.3」について、Anthropic の研究チームは、悪用を止める仕組みが簡単な手口で多くの場合に外せた、としていました。NIST の AI の評価部門(CAISI)は 9/17 の評価で、これまでに出た公開モデルで最もサイバーの力が高い一方、米国の最先端のモデルよりははっきり低く、約4か月遅れ、とまとめていました
- Anthropic の研究チーム「誰でも使える中国の公開モデルが、攻撃の力で一線を越えた」
関連する言葉
- パラメータとモデルの大きさ・ファインチューニング・基盤モデル・量子化・ジェイルブレイク(脱獄)・データの扱い(→ この欄の別ページ)
出典
- NTIA(米国商務省 国家電気通信情報庁)「Dual-Use Foundation Models with Widely Available Model Weights」2024年7月 ntia.gov ↗
- NIST「NIST AI 600-1:Artificial Intelligence Risk Management Framework: Generative Artificial Intelligence Profile」2024年7月 doi.org ↗
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」2026年3月31日、第2部「透明性」・第3部の広島プロセス国際行動規範の部分 soumu.go.jp ↗
- OpenAI「gpt-oss-120b」(開発者向けのモデルのページ) developers.openai.com ↗
- Google AI for Developers「Gemma models overview」 ai.google.dev ↗
確認メモ:2026年10月1日に、上の5つの出典の原文を開いて確かめました。NTIA の報告書は、要旨・用語の説明・背景(重み・開き方の段階)を読みました。報告書が主に扱うのは、米国の大統領令の定義による「デュアルユース(軍民両用)の基盤モデル」(少なくとも数百億のパラメータを持つ、などの条件がある)で、重みが広く手に入るものです。この条件はこのページでは細かく書いていません。NIST の文書は、リスクの特徴を述べた部分と、外のモデルを取り入れるときの部分(A.1.3節)と、推奨する取り組みの GV-6.1-010(利用の決まりの見直し)を読みました。台帳の候補にあった OECD の資料は、ページが自動の確認の画面で止まり開けなかったため使っていません。出典ごとに呼び方(オープンウェイト・オープンモデル・オープンソース)が違いますが、呼び方の違いが何を意味するかはどの出典にも書かれていないため、違いの中身は書いていません。それ以外の説明の食い違いは、確かめた範囲では見当たりませんでした。「ニュースでの出方」は、AIログの記事の無料部分にある記述をそのまま挙げています。安全の仕組みを外す手口は書いていません。国の文書は公共データ利用規約にもとづき、内容を言い換えて使っています(出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」を加工して作成)。