一言で
AI の会社やクラウドの会社が提供するモデルは、その会社の設備の上で計算されます。設備は世界の「地域(リージョン)」に分かれていて、どの地域で計算するか・どの地域にデータを置くかを、ある程度選べるサービスがあります。
このページで分かること
- クラウドと地域(リージョン)が何を指すか
- 「データを置く場所」と「計算する場所」が、別々に決まること
- 各社が用意している、処理する地域の選び方と、その例外
先に知っておく言葉
- 推論:学習を終えたモデルに入力を渡して、答えを出させること(→ 別ページ「学習(事前学習)と推論」)
- API:プログラムから AI を使うための窓口(→ 別ページ「API と料金の数え方」)
- データセンター:計算機をまとめて置いている建物(→ 別ページ「GPU と計算資源・データセンター」)
クラウドと地域
米国の NIST(国立標準技術研究所)の定義(SP 800-145、2011年9月)では、クラウドは、ネットワークを通じて、共有の計算資源(サーバー・保存場所・アプリなど)を必要なときにすぐ使い始め、やめられるようにする仕組みです。資源は多くの利用者で分け合い、利用者はふつう資源の正確な場所を決めることも知ることもできないが、国・州・データセンターのような大きな単位でなら場所を指定できることがある、としています。
この「大きな単位」に当たるのが地域です。Google Cloud は、リージョンを互いに独立した地理的な区域とし、1つのリージョンは3つ以上の区画(ゾーン)からなり、3つ以上のデータセンターに置かれる、と説明しています。ただし大阪・ストックホルム・メキシコ・モントリオールは、3つのゾーンが1〜2か所のデータセンターにあり、広げている途中としています。
置く場所と計算する場所は別
各社の説明では、データを保存しておく場所と、モデルが実際に計算する場所が、別々の設定や仕組みで決まります。
- Anthropic(Claude の会社):推論を動かす場所(inference geo)は1回ごとに「どこでも(既定)」か「米国だけ」を選べる。保存の場所(workspace geo)は別の設定で、いまは米国だけ。米国だけの推論は Claude 4.6 以降のモデルで選べ、料金は標準の1.1倍
- OpenAI(ChatGPT の会社):対象の顧客が、プロジェクトごとに地域を選べる。日本の地域は、保存が要る機能のデータは日本の中に置くが、計算をその地域の中で行う対象には入っていない(2026年10月1日に見た表)。そうした地域では、計算や一時的な保存が地域の外で行われることがある。また、アカウントの情報や利用の統計などは、どの地域を選んでも外で扱われることがある
- Google Cloud:保存したデータは、呼び出し先によらず選んだ場所に置かれる。計算の場所は呼び出し先で決まり、米国・EU のまとまりの窓口ならその中で計算する。世界のどこでも計算する窓口(グローバルエンドポイント)は、どの地域で計算されるか選べず知ることもできない
- Amazon(AWS の Bedrock):計算の振り分け先を、米国・EU・アジア太平洋などのまとまりの中に限る形と、世界の商用リージョンのどこかに送る形から選べる。まとまりの形では、データの保存は既定で呼び出した地域だけだが、振り分けの間に入力と出力がその地域の外に出ることがあり、一部のモデルで不正の検出のために残す分は振り分け先の地域に置かれる。世界の形は約10%安い、としている
- Microsoft(Foundry):保存したデータは指定した地理の中に置かれる。計算は「どの地域でも」「米国・EU・アジア太平洋のまとまり(データゾーン)の中」「指定した地理の中」の3つから選ぶ
料金の付け方は出典で違い、Anthropic と OpenAI(2026年3月5日以降に出た対象のモデル)は地域を絞ると高くなり、AWS は世界の形のほうが安くなる、と書いています。
なぜ大事か(国の文書)
- AI事業者ガイドライン(総務省・経済産業省、第1.2版、2026年3月31日):本編の注で、データの扱いは、事業の地理的な広がり、提供する側と使う側の所在地、学習をするサーバーの所在地などに応じて、それぞれ当てはまる国の法律に従う必要がある、としている。別添では、関わる会社が複数の国にまたがるとき、データを国の外へ移すことや、国の中に置くことを求める決まり(データローカライゼーション)に関わる AI ガバナンスを検討するよう書き、地域ごとにデータセンターを置く、といった会社の取り組みの例を載せている
- 文部科学省の生成AI のガイドライン(Ver.2.0、2024年12月26日):学校で気をつけるリスクの例として、外のサービスを使うと、日本の法律が当てはまらないおそれや、争いになったときの裁判所が日本の外になるおそれがあることを挙げている
ニュースでの出方
- AWS で、Claude を韓国・シンガポールの1つの地域の中や、インドの国の中だけで処理できるようになった記事。日本(東京・大阪)でどのモデルを国の中で処理できるかも、説明書の対応表から書いています
- AWS で Claude を「国の中だけで処理」できる所が、韓国・シンガポール・インドに広がった。日本は?
- GPT-6.1 Sol が AWS の Bedrock でも使えるようになったが、使える地域は米国だけで、東京リージョンでは使えない、という記事
- OpenAI「GPT-6.1 Sol」。上位の Astra に近い力を、5分の1の料金で
- Claude Sonnet 5.5 が、Claude のアプリ・API のほか、AWS・Google Cloud・Microsoft Azure でも使える、という記事
- Anthropic の新しい中位モデル「Sonnet 5.5」。値段は据え置きで、速く・少ない手数に
関連する言葉
- 学習(事前学習)と推論・API と料金の数え方・GPU と計算資源・データセンター・データの扱い(→ この欄の別ページ)
出典
- NIST「SP 800-145:The NIST Definition of Cloud Computing」2011年9月 nvlpubs.nist.gov ↗
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」本編 2026年3月31日、第2部「C. 共通の指針」の注 soumu.go.jp ↗
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」別添 2026年3月31日、別添2 の行動目標と実践例 soumu.go.jp ↗
- 文部科学省 初等中等教育局「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」2024年12月26日 mext.go.jp ↗
- Google Cloud「Geography and regions」 cloud.google.com ↗
- Anthropic「Data residency」 platform.claude.com ↗
- OpenAI「Data controls in the OpenAI platform」の Data residency controls の節 developers.openai.com ↗
- AWS「Route model inference requests across AWS Regions with cross-Region inference」 docs.aws.amazon.com ↗
- AWS「Geographic cross-Region inference」 docs.aws.amazon.com ↗
- Google Cloud「Data residency」(Gemini Enterprise Agent Platform) cloud.google.com ↗
- Google Cloud「Deployments and endpoints」(Gemini Enterprise Agent Platform) cloud.google.com ↗
- Microsoft Learn「Deployment types for Microsoft Foundry Models」 learn.microsoft.com ↗
確認メモ:2026年10月1日に、上の出典の原文を開いて確かめました。NIST の定義は、クラウドの5つの特徴のうち、資源を分け合う特徴(resource pooling)の説明を使いました。AI事業者ガイドラインは第1.2版の本編(第2部 C の注)と別添(別添2 のデータの越境移転とデータローカライゼーションの記述・実践例)を読みました。文部科学省のガイドラインは「学校現場において留意すべき代表的なリスクや懸念の例」の外部サービスの項を読みました。各社の地域の選び方は名前も中身もそろっていないため、1つにまとめずに会社ごとに並べています。OpenAI の地域の表と対象のモデル、AWS・Google の対象のモデルや地域は変わることがあり、本文には 2026年10月1日に見た内容を書いています。OpenAI の地域を使うには営業窓口への問い合わせが要り、米国以外の地域ではさらに条件があります。Google の生成AI の基盤は、確かめたページでは「Gemini Enterprise Agent Platform」と書かれていました。個々のモデルがどの地域で使えるかの一覧、AWS の1つの地域だけで動かす形の詳しい条件、各社の窓口の名前(us.api.openai.com など)は、言葉の説明から外れるため載せていません。「ゾーン」「グローバルエンドポイント」「データゾーン」は出典の英語(zone・global endpoint・Data Zone)を言い換えたものです。「データローカライゼーション」の言い換え(国の中に置くことを求める決まり)は、ガイドラインに説明が無いため、ふつうの意味を添えたものです。「ニュースでの出方」は、AIログの各記事の無料部分に書かれた内容をそのまま挙げています。国の文書は公共データ利用規約にもとづき、内容を言い換えて使っています(出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」本編・別添、文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」を加工して作成)。